大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和45年(行ウ)74号 判決 1971年8月06日

差戻前第一審昭和四〇年(行ウ)第四一号事件原告、同第六五号事件 被告の参加人

右代表者

前尾繁三郎

右指定代理人

篠原一幸外四名

差戻前第一審昭和四〇年(行ウ)第六五号事件原告、同第四一号事件 被告の参加人

全逓信労働組合

宮崎県北部支部

右代表者

尾崎幸男

右訴訟代理人

東城守一

外一名

差戻前第一審昭和四〇年(行ウ)第四一号事件、同第六五号事件

被告

公共企業体労働委員会

右代表者

兼子一

右指定代理人

峯村光郎

外四名

主文

一  申立人原告全逓信労働組合宮崎県北部支部、被申立人延岡郵便局長間の昭和三六年(不)第三二号救済命令申立事件につき、被告が昭和四〇年三月八日にした別紙命令書記載の命令中、主文第二項ならびに第三項のうち(1)原告全逓信労働組合宮崎県北部支部が昭和三六年八月一七日にした団体交渉の申入れに対する拒否、(2)同月一六日の全逓信労働組合宮崎県地区本部の役員に対する尾行および(3)同月一四日の同原告の集会に対すな監視がいずれも不当労働行為を構成しないとして、これらの点に関する同原告の救済申立を棄却した部分を取り消す。

二  原告全逓信労働組合宮崎県北部支部のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、原告国と被告との間においては、被告の負担とし、原告全逓信労働組合宮崎県北部支部と被告との間においては、訴訟費用は二分し、その一を同原告の、その余を被告の負担とし、参加人国の参加によつて生じた費用は二分し、その一を参加人国の、その余を原告全逓信労働組合宮崎県北部支部の負担とし、参加人全逓信労働組合宮崎県北部支部の参加によつて生じた費用は、原告国の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  原告国

(一)  被告が昭和四〇年三月八日した主文第一項記載の命令中主文第二項を取り消す。

(二)  訴訟費用は、被告の負担とする。

二  原告全逓信労働組合宮崎県北部支部(以下原告支部という)

(一)  被告が昭和四〇年三月八日した主文第一項記載の命令中主文第二および第三項を取り消す。

(二)  訴訟費用は、被告の負担とする。

三  被告

(一)  原告らの請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  原告国の請求原因

一  本件救済命令

原告支部は、延岡郵便局長阿曾法眼を被申立人として、別紙命令書中理由第一1に記載した事項(①ないし⑦)を不当労働行為であるとし、被告に対し救済の申立をした。被告は、昭和四〇年三月八日別紙のとおり右申立の一部を認容する旨の命令を発し、この命令書写は、同月九日原告国に交付された。<後略>

理由

一本件救済命令

原告国および原告支部の各請求原因第一項記載の事実は、当事者間に争いない。

二本件の背景

(一)  郵便業務特別考査

昭和三六年、郵便物の滞留遅配の状況が全国的にみられたので、郵政省は、その原因を調査するため、全国的に郵便業務の運行が不良と認められる郵便局を選び、郵便業務特別考査を実施したことは、当事者間に争いない。<証拠>によれば九州においては、延岡郵便局を含む五局が特別考査実施の対象局とされ、同郵便局においては、昭和三六年五月一六日から同月一八日までの間、熊本郵政局職員および熊本郵政監察局監察官によつて特別考査が行なわれたこと、その結果同監察官らは、延岡郵便局における郵便遅配の主たる原因が、原告支部と同郵便局長または同局課長らとの間に締結された協定や取りかわされた確認書で、郵政当局の管理権を侵害する内容を有するものが多数存在することおよび職場規律が乱れていることにあるとして、同郵便局長に対し、確認書を破棄するなどして、これを改善するように勧告したことが認められる。右認定を覆えすに足りる証拠はない。

(二)  確認書等の破棄と立入禁止措置

延岡郵便局長が、同年八月一二日原告支部に対し、原告支部と同局長らとの間に前記協定確認書等で約した二一項目にわたる事項を、それらが同局長の管理運営に属する事項に関し、または権限外の事項に関するものであることを理由に、これを破棄する旨通告し、一方同局職員に対しては、従来からあつた確認書などを破棄したこと、正常な労働慣行を確立するよう要望することおよび違法な行為のあつた場合は、厳重な処分を行なわざるを得ない旨の局長訓示を局内に掲示して、その旨伝達したこと、更に同局長は、八月一二日早朝から同局職員以外の者の無断入局を禁止する旨を記載した告知板を同局通用門のところに掲出したことは、当事者間に争いない。

(三)  監視労働と上部組合の応援

<証拠>によれば、熊本郵政局および熊本郵政監察局は、昭和三六年八月一一日から同月末日までの間、延岡郵便局の前記滞留郵便物排送のため、同郵便局に監視班または指導班と称して、一日につき、少ない日は約七名、多い日は二三名の職員を送り込んだこと(原告支部組合員などは、これをトラック部隊と称していた。)、これらの者は、同局の郵便運行業務の指導調査、事務処理の応援、労務関係事務処理などの任務を与えられていたこと、そしてこれらの監視班員は、同局の内勤および外勤の各部門についてその業務の遂行を監視調査し、特に郵便集配の部門においては、郵便物の区分整理に従事している職員(原告支部組合員)一人につき、二・三名の割で監視に当たることもあり、ある者はストップウォッチをもつて作業の速度を測定し、他の者はこれをメモ帳に記帳したりなどし、また作業中の喫煙や私語をいろいろ注意し、休憩時間と作業時間の区分を厳守させたりしたこと、従業職員に対する勤務指定変更の業務命令に不服がある場合は、この都度原告支部執行委員がその職員に代つて、当局と交渉し、解決を図つたりするのが例であつたが、監視班臨局後は、そのようなことのためにも離席することが禁止されたため、組合員は、労働条件に関し、適切な苦情や異議の申立をする機会も失われてしまつたこと、原告支部は、監視班臨局の事実を上部組織たる地区本部および地方本部に連絡し、その実情調査と組合活動への応援を求めたので、両本部ともこれを了承し、地区本部は、八月一一日に尾崎書記長を、同日一三日に富永委員長を、地方本部は、同日畑野および大石両執行委員を延岡郵便局に派遣したこと、同人らの任務は、監視班の監視下にある同局所属組合員の労働状況を調査し、不当労働行為など労働者の権利が侵害される事実があるときは、これに対し適切な対策を樹立し、処置することであつたことが認められる。右認定に反する証拠はない。

三原告支部事務所出入禁止措置

(一)  事実関係

延岡郵便局が昭和三六年八月一二日に同局職員以外の者の無断入局を禁止する旨掲示した後も、地方本部の富永委員長および尾崎書記長、地方本部の畑野および大石両執行委員らが、原告支部の組合活動の指導応援のため、同郵便局庁舎内にある原告支部事務所に入室し、更に各課郵便事務室にも出入りしたことは、当事者間に争いない。

<証拠>によれば、延岡郵便局長は、前記のとおり富永委員長らが郵便事務室に出入するので、同月一二月から一五日まで、数十回にわたつて事務室からの退去を要求したが、同人らは、これを無視して、再三事務室に入室したこと、特に同月一四日には、富永委員長が事務室に入室したので、同室で郵便事務の監視をしていた熊本郵政局人事部労働係長坂本基澪などが同郵便局長の命を受け、同委員長に対し、退去命令を発したところ、同委員長は、「ばかたん」「どこの馬の骨か」「延岡には月夜の晩だけではなく、やみ夜の晩もある」「土手つ腹に風穴をあけるぞ」「うろうろするやつには小包をなげつけろ」等と叫んで抗議したこと、そのため作業中の職員のうちには、これに同調して抗議の声を発する者や、これに気をとられて作業を中止する者などがあらわれ、郵便業務の運行に支障を及ぼすおそれが生じたことが認められる。

延岡郵便長が通用門および裏門附近に職員を配置して入局者の監視に当たり、同局職員以外の者が構内に無断で立ち入ることを妨止したことは、当事者間に争いない。<証拠>によれば、右立入禁止措置をしたのは、昭和三六年八月一六日であることが認められ、原告支部代表者尋問の結果中右認定に反する部分は措信しない。

<証拠>によれば、延岡郵便局の局舎およびこの局舎内にある原告支部事務所の配置は、別紙平面図記載のとおりであること、同局長がとつた前記入局禁止措置のため、八月一六日以降は、原告支部の組合活動の応援等に来ていた上部組合の役員である富永委員長、尾崎書記長、畑野執行委員らは完全に郵便局構内に入ることを拒否され、また原告支部の役員であつて同郵便局以外に勤務している者や当日勤務でない原告支部の役員も入局を拒否されることがあり、したがつて以上の組合役員が原告支部事務所を組合活動のために利用することは、全く不可能になるか、または著しく制限されてしまつたこと、このため原告支部は局庁舎前の民家を賃借して、これを臨時の組合事務所として使用したことが認められる。右認定を覆えすに足りる証拠はない。

そして入局禁止措置が、昭和三六年八月二四日解除されたことは、当事者間に争いない。

(二)  不当労働行為の成否

前認定の事実によれば、原告支部の上部組合の役員である富永委員長らが延岡郵便局事務室内に入室するのは、事務室内で作業中の原告支部組合員の労働状況、特に不当労働行為がなされていないかどうかについて調査点検し、法令違反の取扱や不当労働行為がなされた場合は、それに対する対策を樹立し、適宜な措置をしようとするためであるから、正当な組合活動の範囲を逸脱するものではない。しかし一方、郵便事務室は、公衆の自由な出入を認められた場所ではない。そしてそこには、書留郵便物、信書、小包または現金など重要な金品が存在し、郵便局長としては、郵便物の紛失や通信の秘密の侵害を防止する義務と必要がある。これらのことを考えれば、第三者が郵便事務室に出入するためには、原則として、庁舎管理者の許可を必要とするものと解すべきである。

問題は、組合活動と庁舎管理権のいずれが優先すべきであるかである。一般的普通的に何れか一方が優先するものと解するのは適当でなく、組合の調査点検の必要性と庁舎管理権発動の必要性を比較考慮して具体的個別的に決すべきもものであろう。前認定の事実によれば、延岡郵便局長は、従前原告支部との間に締結し、労働慣行の基礎となつていた確認書などを一方的に破棄し、多数の監視員を動員して、原告支部組合員の作業状況の監視をした。しかもそれは、作業中の一人の職員に数人の監視員がついて、ストップウォッチで作業能率を測定するほどのものであつた。職場において職制またはその委任を受けた者が、職員の作業状況を監督指導できることは当然であるが、その方法が前認定のような過酷にして露骨のものとなるときは、これはも早職場秩序維持や能率向上のための監督として是認される程度をこえている。労働条件の問題というよりも、一歩誤れば、個々の労働者の人間としての尊厳を侵害する危機を包蔵している。労働組合にとつては、正に黙許し難い事態である。上部組合役員がその調査点検のため、郵便事務室に入室するのは、基本的人権防衛のため緊急の必要性があるものというべきであろう。したがつて富永委員等らが庁舎管理権者たる郵便局長の許可なく入室したとしても、入室自体は、民事上の違法性を阻却するものと解すべきである。

入室しても違法性がないということは、入室していかなる言動をしてもよいということではない。調査点検のための入室であるから、業務の妨害とならない場所と方法をもつて、調査に従事しなければならない。そこには、目的からする行動の制約がある。ところが前認定によれば、富永委員長は、退去命令に暴言をもつて抗議し、郵便業務に支障を及ぼす虞れが生じたのである。入室の正当性は、暴言を正当化するものではない。暴言は、組合活動ではないから、暴言によつて郵便業務に支障を及ぼすことが正当な組合活動として保護されるものでもない。特に、延岡郵便局当局は、当時こぞつて滞留郵便物排送業務に努力中であつた。同郵便局長としては、以上のような業務妨害を排除するため、現に暴言を弄し、郵便業務に支障を及ぼす虞れを生ぜしめた上部組合役員に対しては、その郵便事務室内への入室を禁止する必要性が生じたと認めるべきである。

しかし、郵便業務妨害の虚れを生ぜしめた組合役員に対しては、郵便事務室への入室禁止の必要性があるといつても、それは庁舎内全部への入構禁止措置を必然化するものではない。郵便局庁舎内全部への立入禁止措置をとれば、上部組合役員らが原告支部事務所を組合活動のため使用できなくなることは、同郵便局長としては当然予見し得たはずであり、現にそうした事態を生じたのである。使用者が組合事務所の使用を妨害することは、正当防衛類似の特段の事情のない限り、労働組合の運営に対する支配介入として不当労働行為を構成する。組合事務所使用妨害の状態を作出した者は、本件においては原告国が、それ以外にとるべき方法がなかつたことを不当労働行為成立の阻却事由として立証する責任がある。

庁舎と原告支部事務所の位置関係が別紙平面図記載のとおりであることは、先に認定したとおりである。証人坂本基澪の証言中には、組合役員の郵便事務室内への出入を阻止するためには、前認定のような庁舎全体への入局禁止措置をとるより外に方法がないとの部分がある。しかしこの証言は、単なる意見の開陳に過ぎないものとみるべきであるし、同証言によつても、同郵便局としては、設備上または人員および資金上の制約などから、原告支部事務所への出入を禁止しないで、郵便事務室への出入を禁止する措置をとることが社会通念上困難であつたとは認められないのである。その他これを認めるに足りる証拠はない。 かえつて、原告支部事務所と庁舎との位置関係から見れば、被告主張のように組合事務所と食堂との間の出入口に施錠したり、通用門から同事務所まで、その内側に柵を設けるなどの施設をすることによつて、組合役員の郵便事務室への入室を一応は阻止できたのではないかと考えられるのである。郵便業務妨害の虞れを生ぜしめた組合役員が多数いたという立証はないからである。結果郵便局長としては、不必要にも庁舎全体への入構禁止措置をとり、組合役員らの原告支部事務所の使用を妨げる結果を招来したのであるから、これは労働組合の運営に対する支配介入として不当労働行為を構成する。

以上は、現に郵便業務妨害の虞れを生ぜしめた組合役員に対する場合だけに妥当する理である。上部組合役員または原告支部役員が静ひつに入室して調査点検することが違法でないことは、前記のとおりであるから、郵便事務室への入室禁止措置の対象とさるべき者は、職場秩序を侵害し、または侵害する虞れのある組合役員に限られる。そうした虞れのない役員に対してまで、事前に一切の入室を禁止することは、前認定のような監視付労働を継続している限り許されないのである。富永委員長以外の役員が職場秩序を紊乱する虞れのあつたことについては立証がない。したがつて、同委員長以外の組合役員に対しても、一切入構を禁止した措置は、その必要性を是認できないから、その結果それら役員の原告支部事務所使用を妨害したことは、多く論ずるまでもなく、支配介入として不当労働行為を構成するのである。

原告国は、延岡郵便局長には、不当労働行為意思がなかつたと主張する。しかし、そもそも支配介入の成立には、使用者の意思に基づいて支配介入となるべき行為が行われたという事実があれば十分であつて、不当労働行為意思の存在は必要ではないのであるから、右主張は採用しない。

(三) 条件付救済命令の適否

救済命令は行政行為である。付款を付けられる行政行為は、法律行為的行政行為に限られる。そしてこれに付款を付けられる場合は、そのことを法令自身が認めているが、これとも一定の行為をするかどうか、どういう場合にどういう行為をするかについて行政庁の自由裁量が認められている場合である。使用者に一定の行為を命ずる救済命令は、法律行為的行政行為である。そして救済命令は、労使間の関係を不当労働行為のなかつたのとできるだけ同じ状態に回復させることを目的とするが、いかなる場合にどういう内容の救済命令を発するかについては法令の規定がないから、救済命令の内容は、その目的の範囲内において労働委員会の裁量に委ねられているものと解する外はない。そうすると救済命令にも付款を付けることが許されるということになる。

行政行為に付款を付し得る場合も、その付款は、行政行為の目的に照らし必要な限度に止まらなければならない。救済命令の目的は、使用者の不当労働行為によつて惹起された事実状態からの原状回復である。原状回復を命じられる者は、不当労働行為の主体である使用者であつて、その相手方である労働者(労働組合も同じ。以下これに準ずる。)ではない。救済命令において、不当労働行為の行為者でない労働者に、不当労働行為からの原状回復のために一定の行為を要求することは、制度の目的上論理的な矛盾を犯すものである。また労働委員会は、労働者に対する一般的監督権を有するものでもないし、審査手続において、労働者の違法または不当な行為を是正する権限を特に与えられているものでもない。もつとも、労働者の違法または不当な行為が、不当労働行為の成否の判断の資料となることは当然のことである。労働者の違法または不当な行為のために、不当労働行為の成立が阻却されるというならば、その申立を棄却すれば足りる。結局救済命令において労働者に一定の行為を命じるのは、一般にその目的を越脱しているし、また労働委員会は原則として、救済命令においても労働者に何らかの行為を命ずる権限も有しないのである。ただ労働者が自ら一定の行為をすることを条件とする救済命令をするならば、かかる条件は救済命令を否定する必要はない。労働者自身労働委員会の監督に服することを承認しているのであるから、労働委員会の権限踰越の問題を生じない。また観念的には、労働者が一定の行為をすることを条件としなければ、救済命令の内容が論理的に実現不可能であるような場合は、条件付救済命令も適法であろう。

本件において、被告は、組合側の行きすぎた行為が郵便局長の不当労働行為の原因になつたものと認定して、原告支部が郵便局長にその行為につき遺憾の意を表する文書を交付することを停止条件とする救済命令を発した。前認定のとおり組合の一部役員の行きすぎた行動が本件不当労働行為の誘因であつたことは否めない。しかし、その両者は、組合側がその行為を陳謝しなければ、郵便局長の組合側に対する原告事務所使用妨害に対する陳謝という不当労働行為の回復行為が不可能であるという意味で、論理的先後関係に立つものではない。しかも原告支部は、このような条件付救済命令の申立をしていない。原告支部としては、この救済命令を実効あらしめるためには、先ず自ら陳謝文を郵便局長に交付しなければならない。実質的には、被告によつて、その意に反する不利益な行為をする義務を課せられたと同様な結果となる。かかる救済命令が違法とされるならば、不当労働行為の成立が認められるにもかかわらず、救済命令の多くは実効を失い、労働者は救済を否定されたのと選ぶところはないことになろう。このように労働者に一定の不利益行為を命じたと同様な結果となる条件は、労働委員会の権限を越脱し、かつ救済命令の目的に背馳し、違法であると解せざるを得ない。

被告は、この条件を付けなければ、本件のような内容の救済命令自体を発しなかつたであろうことは、別紙命令書の内容全体に照して明らかである。そうすると、本件条件は、本件救済命令の重要な要素であると認められるから、この条件の違法は、本件救済命令(主文第二項)全体の違法性を招来する。したがつて、主文第二項は、違法な救済命令として取り消さるべきである。

四団体交渉拒否

(一)  昭和三六年八月一七日の団体交渉拒否

1  申入れと拒否

原告支部が同日午後一時半ごろ労務担当主事本田一嘉を通じて、延岡郵便局長に対し、同日午後三時から強制労働排除について団体交渉を行ないたい旨書面で申し入れたことは、当事者間に争いない。<証拠>によれば、この強制労働排除とは、前認定の同年八月一一日から原告支部組合員の作業についてなされた監視または調査(理由第二項(三)認定事実)を指していることが認められるから、これは労働条件に関する事項として団体交渉の対象となる事項である。

<証拠>によれば、延岡郵便局長は、右団体交渉の申入れを拒否することとし、労務担当主事本田一嘉に対し、原告支部にこの旨伝えるよう命じたので、同主事は、同日原告支部長土田靖に対し同局長は業務上の支障があるから団体交渉には応じないと言つているとして同局長の意向を伝達したことが認められる。これによれば、同局長は原告支部の団体交渉の申入れを拒否したものである。

2  正当な理由の存否

<証拠>によれば、延岡郵便局長が団体交渉を拒否した理由は、第一に、原告支部から同局長に対し団体交渉の申入れがあつたとき、同局長は、熊本郵政局長井業務課長と遅配対策や郵便業務について打合せ中であり、同郵便局としては、なお遅配解消せず、滞留排送業務に努力中であつたためであり、第二に、当日原告支部の応援のため外部組合員が多数集合しており、原告支部長土田靖が団体交渉の申入れに際し、その中で団体交渉をすると言つたため、同局長としては、団体交渉が円滑に行なわれないのではないかという疑いをもつたためであることが認められる。

しかし、同局長が午後一時半ごろ長井業務課長と打合せ中であつたとしても、その打合せが、原告支部が指定した団体交渉開始時刻の午後三時まで継続し、同時刻をもつて中断できないような事情のあつたことについては立証がない。また当時同郵便局としては郵便物が滞留し排送業務に努力中であつたとしても、同局長が午後三時から団体交渉のため時間を割愛できない程繁忙であつたことについては主張立証がない。また外部組合員が多数動員されており、団体交渉はその中ですると言つたとしても、<証拠>によれば、原告支部は当日の団体交渉の場所を局長室と指定して申し入れているのであるから、前記発言の趣旨は、外部組合員多数の存在する中で大衆団交方式をもつて団体交渉をするというのではなく、単に団結の示威を強調したにとどまるものと解すべきである。そうすると、その発言の事実だけでは、団体交渉が混乱するとか、整然と行なわれない虞れがあることを推認することはできない。その他団体交渉を困難ならしめるような事情を認めるに足りる証拠はない。以上のとおり、団体交渉拒否の理由は、いずれも正当な理由と認めることはできないから、延岡郵便局長のした団体交渉拒否は、不当労働行為を構成する。したがつて、本件命令中これを不当労働行為にならないとしても、原告支部の申立を棄却した部分は、違法として取消を免れない。

(二)  昭和三六年八月二一日の団体交渉拒否

原告支部が同日午前九時ごろ、宮崎郵便局長に対し、能率向上手当の支給に関する基準について翌二二日午前一〇時から局長室まで団体交渉を行ないたい旨申し入れたこと、是枝課長が同局長の業務日程を勘案して、二三日の午後に行ないたい旨述べたところ、同支部長はこれを了承し、二三日午後一時すぎから三時ごろまで、上記申入れ事項について話合いが行なわれ、その後も話合いが行なわれて意見の一致をみ、同年一〇月二五日に能率向上手当が支給されたことは、当事者間に争いない。

<証拠>によれば、この話合いとは原告支部と郵便局側が労働条件に関し事実上協議し、場合によつては合意に達することもあるが、それはあくまでも口頭による合意にとどまり、それ以上に協定書や協約書として、協議の結果を、労働協約としての効力を有する文書にすることを含まないものと認められる。そうするとこの話合いとは、団体交渉でないから、もし郵便局長が話合いを固執し、話合いには応ずるがその結果を文書化することには応じないとか、話合いだけには応ずるという意思を明示しているならば、これはすなわち団体交渉の拒否となる。しかし、本件においては、郵便局長が話合いを固執したことを認めるに足りる証拠はない。かえつて前認定によれば当事者間に団体交渉か話合いかをめぐつて別段の争いもなく、団体交渉の申入れは自然に話合いに推移し、協議が行なわれ、妥結したことが窺われるのであるから、前認定の事実だけでは、団体交渉の拒否があつたものとは認められないのである。したがつて、団体交渉の拒否があつたことを前提とする原告支部のこの点に関する請求は失当である。

五組合役員に対する尾行

(一)  富永委員長に対する尾行

昭和三六年八月一四日午前七時半ごろ、地区本部委員長富永正則が郵便事務室に入室した際、郵便局長が口頭および文書で数回にわたつて事務室からの退去を要求したこと、同委員長は、この要求に応せず抗議をしたこと、熊本郵政局人事部管理課労働係長坂本基澪らが同日午前九時ごろから約三〇分間、同委員長に同行して退去を要求するとともに、その行動について時々メモをとつたことは、当事者間に争いない。そして富永委員長のこの時の抗議の方法が激烈を極めたため、郵便業務の運行に支障を及ぼす虞れが生じたことは前認定のとおりである(第三項の(一)記載事実)。

富永委員長の抗議の方法が正当な組合活動の範囲を越脱し、保護に値しないものであることは前説示のとおりである(第三項の(二)記載)。そうすると、坂本係長が同委員長に同行して退去を要求し、或いはメモをとつたとしても、それは職場秩序維持のためやむなくとられた行為と認めるの外なく、これによつて組合の運営が干渉妨害され、それに重大な影響を及ぼしたものと解することはできない。したがつて、この尾行は、組合の運営に対する支配介入とならないから、これが不当労働行為を構成することを前提とする原告支部のこの点に関する請求は失当である。

(二) 尾崎書記長に対する尾行

昭和三六年八月一六日朝、地区本部書記長尾崎幸男が延岡郵便局通用門から同局に入局しようとしたが、通用門入口に立つて見張つていた熊本郵政局管理課労働係宮崎演紀らの阻止にあい入局できないまま、電話をかけるため当時原告支部において秘密の連絡場所としていた同局庁舎の裏側にある全国電気通信労働組合の事務所へ向つたことは、当事者間に争いない。<証拠>によれば、宮崎係官らは、尾崎書記長が前記のとおり通用門から全電通労組事務所へ行くまで、同書記長を尾行し、その結果原告支部の右連絡場所を探知することになつたことが認められる。

前記乙第三九号証には、宮崎係官が尾崎書記長を尾行したのは同書記長が他の門から入局するかもしれないのでこれを阻止するためであつたとの記載があるが、当時延岡郵便局長が各門に職員を配置して、尾崎書記長ら上部組合役員の入局を禁止する措置をとつていたことは先に認定したとおりであるから(第三項(一)記載事実)、他の門からの入局を阻止するためならば、同書記長を尾行する必要は少しもなかつたのである。それにもかかわらず、庁舎を離れた他の場所まで尾行をし、組合の連絡場所を発見したのは、尾崎書記長の組合役員としての行動を監視する一種のスパイ行為と見なさざるを得ない。かかる行為は、組合役員の行動に対する干渉妨害であり、ひいては組合の運営を支配介入するものであるから、不当労働行為を構成する。したがつて、本件命令中、これが不当労働行為とならないとして、原告支部の申立を棄却した部分は、違法として取消を免れない。

六集会の監視調査

(一)  昭和三六年八月一四日の集会監視

原告支部が同日組合集会を開催したこと、原告支部は集会のため当初中庭の使用を予定していたが、それが許可されなかつたため、局庁舎に隣接する西側公道上で休憩時間中に開いたこと、その集会には、約四五名の職員、富永委員長および尾崎書記長らが参加し、同日午後零時半ごろから一時ごろまで開かれたこと、宮崎局長は、是枝課長らとともに集会の開かれている公道上におもむき、集会の状況を監視し、その場所、時間、参加人員などを記録し、また坂本係長らは集会場所に近接した局庁舎の二階保険課事務室から、熊本郵便局施設課長二宮亮之介らは一階郵便課事務室から、それぞれ集会を傍聴したこと、尾崎書記長は、郵便局長らに対し、同局長らが集会を傍聴していることについて抗議するとともに、その場所から退去するよう再三要求したが、同局長らはこれに応じなかつたことは、当事者間に争いない。

労働組合は、個々の労働者の個別的利害関係をこえて、労働者としての共通の利益を確保し増進させる組織である。労働組合がこの目的を遂行するためには、組合の運営が構成員の意思を民主的に反映するものでなければならない。労働組合の集会は、個々の労働者の意思を民主的に反映するために最良の手段である。そこでは、組合員の自発的意思決定と自由な発言が保障されなければならない。労働者が労働組合のために正当な発言をしたことによつて不利益な取扱を受けないことは、制度的には保障されている。しかし実際は、職制監視の下の組合集会において、個々の労働者が、不利益取扱を恐れることなく、自由な組合活動的発言をすることを期待できるほどには、言論の自由の保障や民主主義の理念はわが国社会一般には浸透していない。このような社会においては、非組合員たる職制が組合集会を監視することは、労働組合構成員としての労働者の自主的な意思決定と自由な発言を阻害し、組合の運営に影響を及ぼすことになるから、組合運営への支配介入となるのである。

本件においては、郵便局長らは、組合集会を監視し、その状況を記録し、しかも組合員から再三退去を要求されながら、なおこれに応じなかつたのである。組合員の意思決定や発言に重要な影響を及ぼすこと、これより大なるものはないと言わなければならない。これこそ明白にして典型的な支配介入である。それにもかかわらず、これを不当労働行為に当たらないとして、漫然原告支部の申立を一蹴し去つた被告の命令は、到底理解できないのである。したがつて、本件命令中この点に関する原告支部の申立を棄却した部分は、違法として取消を免れない。

(二)  昭和三六年八月一九日の集会監視

同日午後零時半ごろ土田支部長の先導する原告支部組合員約八〇名が延岡郵便局の中庭に集合し、同局構内においてジグザグデモを行なつたのち通用門から局外に出て、午後一時ごろ同局庁舎から約二〇〇メートル離れた延岡市南町にある光勝寺に向い、同寺本堂内において職場集会を開いたこと、同郵便局長は、同局保険課長代理福見公明に職員の行動および勤務時間中の者の参加の有無を調べるよう指示したこと、同課長代理は、坂本係長らとともに光勝寺におもむいたが、本堂の扉がしまつており、同局職員の姿が見えなかつたので、中に入らないで帰局したことは、当事者間に争いない。

これによれば、局長が同課長代理に命じたのは勤務時間中の職員の有無とその行動の調査であり、このことだけならば論理的に当然には組合員の行動に対する干渉妨害となる行為ではない。干渉妨害となるかどうかは、調査の方法如何による。しかるに同課長代理らは集会の場所に近づけず、その調査もできなかつたのであるからこれにより原告支部の運営が影響を受けたと認めることはできない。したがつて同局長の行為は、組合の運営に対する支配介入とはならないから、この点に関する原告支部の請求は理由がない。

(三)  昭和三六年八月一四日の集会調査

<証拠>によれば、原告支部は同日午後三時半ごろから延岡市本町の郵政クラブにおいて集会を開いたことが認められる。しかし、延岡郵便局長が職員として、その集会の調査をさせたことを認めるに足りる証拠はないから、この集会調査を不当労働行為とする原告支部の請求は失当である。

七組合役員の配転

延岡郵便局長が昭和三六年九月一日に課相互間の八名の配置換と庶務会計課の係相互間の六名の担務変更を行なつたこと、この配置換の対象となつた職員の中には、原告支部書記長黒木勝善ら支部役員三名および原告支部主張の組合活動家三名が含まれ、また担務変更者中には土田支部長外一名の原告支部の役員が含まれていたこと、同局長は、これら異動の計画が原告支部組合員間に漏れることをおそれ、個別に希望を聞くことをしなかつたことは、当事者間に争いない。

多数の組合役員が一挙に異動させられたというだけでは、その異動が組合の運営を支配するものということができない。職員の異動が組合の運営に対する支配介入と認められるためには、その異動が当該職員にとつて不利益な処分であり、そのために他の組合員の組合活動に対する士気を阻喪させたりまたは職場を異にすることによつて、その組合役員の組合活動が著しく制限される結果となつた等の事情が存在しなければならない。

<証拠>によれば、前記配置換や担務変更は、組合役員または組合活動家を狙つた不利益処分で、組合弾圧を目的とするものに外ならないとの趣旨の陳述記載がある。しかし、一般に配置換などは、職員の配置数、業務量、本人の経験・能力・適性などを総合して決められるものであるから、ある配置換が不利益処分とされるためには、他の職員と比較するなどしてそれぞれの事項について具体的な根拠が示されなければならない。右各号証には、単に不利益処分であるという結論があるだけで、因つて来たるところの具体的な根拠が明示されていないから、これだけで配置換などを不利益処分と認めることはできない。また右各号証によつても、この異動によつて各組合役員の組合活動が阻害されることになつたのを認めるに足りない。したがつて、前認定の事実だけでは、右配置換などが組合の運営に対する支配介入とは認められないから、これを不当労働行為とする原告の請求は失当である。

八延岡郵便局長の発言

同局長が昭和三六年九月五日局長室において、約四〇名の原告支部組合のいる所で、土田原告支部長に対し「土田さんあんたもヒットラーみたいな独裁じゃないか」という意味のことを述べたことは、当事者間に争いない。

<証拠>によれば、当日局長室において、同局長と同支部長らは団体交渉を行なつていたが、午後三時五〇分頃約四〇名の原告支部組合員が局長室に押入り、同局長の退去命令にも応ぜず在室したので、同局長は団体交渉の継続を不適当と認めて、団体交渉の打切りを宣言して局長室内の自席に戻つたこと、なお組合員らは退室しなかつたので、同局長は、折角多数の者が来たから雑談しようと提案し、話合いが続けられたこと、その場で原告支部側から前記配置換に対する苦情などもなされたが、それらの話合いをしているうちに、土田支部長が同局長に対し「局長はワンマンではないか」という趣旨の発言をしたので、同局長はこれに対して、前記のとおりヒットラー云々という発言をしたこと、しかしその場の雰囲気は別段緊追したものではなく、局長は笑顔でそう言つたことが認められる。

使用者の発言が不当労働行為となるかどうかは、その発言がなされた時期、場所、相手方等を総合して、組合の運営に対して支配力を及ぼしたかどうかによつて決すべきである。前認定によれば、局長は、特段に土田支部長を誹謗する意図をもつて前記発言をしたとは考えられないし、むしろそれはことの成り行きからのやりとりに過ぎないものと解すべきである。しかもこれにより原告支部の運営に悪影響を及ぼしたという結果を認めるに足りる証拠もない。そうするとこの発言が組合運営に対する支配介入になるとは認められないから、これを不当労働行為とする原告の請求は失当である。

九以上により、本件救済命令中、主文第二項ならびに主文第三項のうち(1)原告支部が昭和三六年八月一七日にした団体交渉の申入れに対する拒否、(2)同月一六日の地区本部役員に対する尾行および(3)同月一四日の原告支部の集会に対する監視がいずれも不当労働行為を構成しないとしてこれらの点に関する原告支部の救済申立を棄却した部分を違法として取り消し、原告支部のその余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九二条本文、第九四条後段、第九六条後段を適用して主文のとおり判決する。

(岩村弘雄 小笠原昭夫戸田初雄)

昭和四〇年三月八日

命令第二七号

昭和三六年(不)第三二号

命令書

公共企業体等労働委員会

命令書

宮崎県延岡市南町一の三の五

申立人 全逓信労働組合宮崎県北部支部

支部長 西村末広

宮崎県延岡市南町一の三の五

被申立人 延岡郵便局長

阿曾法眼

上記当事者間の昭和三六年(不)第三二号事件につき、当委員会は、昭和四〇年三月二日開催された第一七六回公益委員会議において、会長公益委員兼子一、公益委員峯村光郎、同石川吉右衛門、同飼手真吾、同金子美雄合議の上、次のとおり命令する。

主文

1 被申立人は、本命令交付の日から七日以内に下記内容の文書を申立人に交付のなければならない。

昭和三六年八月、貴組合が掲示したビラ等を撤去し、もつて貴組合の運営に介入したことについて、ここに遺憾の意を表わすとともに、今後このような行為を繰り返さないことを約する。

昭和 年 月 日

全逓信労働組合宮崎県北部支部

支部長 西村末広殿

延岡郵便局長 阿曾法眼

2 被申立人は、申立人が被申立人に別記内容の文書を提出することを条件として、下記内容の文書を申立人に交付しなければならない。

昭和三六年八月、貴組合の組合事務所の利用を妨げ、もつて貴組合の運営に介入したことについて、ここに、遺憾の意を表わすとともに、今後このような行為を繰り返さないことを約する。

昭和 年 月 日

全逓信労働組合宮崎県北部支部

支部長 西村末広殿

延岡郵便局長 阿曾法眼

別記

当組合は、昭和三六年八月、上部組合の役員が延岡郵便局に来局した際、組合側の行動に行きすぎた点があつたことを認め、遺憾の意を表わす。

昭和 年 月 日

延岡郵便局長

阿曾法眼殿

全逓信労働組合宮崎県北部支部

支部長 西村末広

3 申立人のその余の申立ては、棄却する。

理由

第一当委員会の認定した事実

一 申立組合は、被申立人が、①申立組合が昭和三六年八月一七日及び同月二一日に行なつた団体交渉の申入れを正当な理由がないにもかかわらず拒否したこと、②八月一四日及び一六日に申立組合の上部機関である全逓信労働組合宮崎県地区本部の役員が延岡郵便局に来局した際これを尾行し組合運営を妨げたこと、③八月一四日申立組合が延岡郵便局の西側の公道上で開催した組合集会及び同月一九日申立組合が延岡市内光勝寺で開催した組合集会を盗聴したり、メモ・写真をとるなどしまた同月一四日申立組合が同市内郵政クラブで開催した組合集会について翌一五日に組合員の自宅に部下を派遣して集会の内容を調査するなどして申立組合に対し圧力を加えたこと、④八月一五日及び一八日に申立組合が掲示した組合情報等を一方的に撤去したこと、⑤八月一六日ごろから二六日ごろまでの間、申立組合の事務所への組合役員及び組合員の出入を防止して組合運営を妨げたこと、⑥九月一日申立組合支部長土田清外七名の組合役員及びいわゆる組合活動家を強制的に配置転換することにより組合員に組合活動に対する恐怖の念を抱かしめ、申立組合の組合運動を停滞せしめたこと及び⑦九月五日土田支部長に対し多数の組合員の前で「土田支部長はヒットラーみたいだ云々」と誹謗し組合の自治的運営に介入したことは、労働組合法第七条第二号及び第三号に該当する不当労働行為であると主張して本件申立てを行なつた。被申立人はこれに対し申立を棄却すべきことを求めた。

2 昭和三六年、郵便物の滞留遅配の状況が全国的にみられたので、郵政省は、その原因を調査するため郵便業務の運行が不良と認められる郵便局を全国で四一局選び、郵便業務運行特別考査を実施した。九州では延岡郵便局を含む五局が特別考査実施の対象局とされ、同局においては、同年五月一六日から一八日までの間、熊本郵政監察局監察官によつて特別考査が行なわれた。その結果、熊本郵政監察局監察官は、延岡郵便局における郵便遅配の主たる原因は、被申立人と申立組合との間に締結された確認書等で管理権を侵害する内容のものが多数存在すること、並びに職場規律がみだれていることにあることを指摘して被申立人に対してこれを改善するよう勧告した。被申立人は、同年八月一二日以降、延岡郵便局に派遣されてきた熊本郵政局職員及び熊本郵政監察局監察官らとともに、同月二三日ごろまでの間、連日、滞留郵便物の排送業務の促進に務めていた。被申立人は、八月一二日、被申立人と申立組合との間に締結されていた確認書等の二一項目を、それらが被申立人の管理運営に属する事項に関し又は権限外の事項に関するものであることを理由として、これらを破棄する旨申立組合あて通告するとともに、延岡郵便局職員に対して従来からあつた確認書等を破棄したこと、正常な労働慣行を確立するよう要望すること及び違法行為のあつた場合は厳重な処分を行なわざるを得ない旨の局長訓示を局内に掲示した。

また、同日早朝より、同局職員以外の者の無断入局を禁止する旨を記した告知板を同局通用門のところに掲出した。

三(1) 申立組合は、昭和三六年八月一二日に熊本郵政局職員らが来局して以来、被申立人らが行なう滞留郵便物排送業務の監督指導により組合員が過重な労働を強制されているものと認め、同月一七日午後一時半ごろ被申立人に対して、午後三時から強制労働排除について団体交渉を行ないたい旨、労務担当主事本田一嘉を通じて書面で申入れた。この際、申入れに当つた土田支部長は本田主事の質問に対し、交渉の具体的内容は交渉の場で明かにすること、及び当日は大日金属、国鉄、全日自労等の組合員が多数動員されており、交渉はこの中で行なわれる旨を述べた。本田主事は、直ちに延岡郵便局長宮崎光雄に対し、団体交渉の申入れのあつたこと、及び土田支部長との間に交された問答の内容を報告した。宮崎局長は、局長室で熊本郵政局郵務部長井業務課長と滞留郵便物の排送業務について打合せを行なつていたが外部の組合員が多数動員されている中で交渉するのは望ましくないとの考えもあつて業務上忙しいからとの理由で当日の交渉をことわるよう本田主事に指示した。本田主事は、申入れ事項が交渉事項でないこと、業務上都合が悪いこと、局としては強制労働の事実は存在しないと信ずるので交渉の必要はないこと等を理由に交渉に応じられない旨土田支部長に伝えた。これに対し、土田支部長は、納得しがたい旨を述べた。

(2) 同月二一日午前九時ごろ、申立組合は、宮崎局長に対し、庶務会計課長是枝藤一郎を通じて、能率向上手当の支給に関する基準について翌二二日午前一〇時から局長室で団体交渉を行ないたい旨申入れた。是枝課長は、宮崎局長の業務日程を勘案して、二三日の午後に行ないたい旨述べたところ同支部長はこれを了承し、二三日午後一時すぎから三時ごろまで、上記申入れ事項について話し合いが行なわれた。その後も話し合いが行なわれて意見の一致をみ、同年一〇月二五日に能率向上手当は支給された。

4(1) 昭和三六年八月一四日午前七時半ごろ、全逓信労働組合宮崎県地区本部委員長富永正則が延岡郵便局に来局して郵便事務室に入室した際、被申立人は、口頭及び文書で教回にわたつてその退去を要求した。富永委員長は、この要求に応ぜず、大声で抗議するなどし、このため職員の業務の執行を妨げるおそれも生じた。そこで熊本郵政局人事部管理課労働係長坂本基澪らは、午前九時ごろから約三〇分間、富永委員長に同行し、同人に対し退去を要求するとともに、その行動について時々メモをとつた。

(2) 同月一六日朝、全逓宮崎県地区本部書記長尾崎幸男は、延岡郵便局通用門から同局に入局しようとしたが、通用門入口に立つて見張つていた熊本郵政局管理課労働係宮崎演紀らの阻止にあい入局できないまま、電話をかけるため当時申立組合において秘密の連絡場所としていた同局庁舎の裏側にある全国電気通信労働組合の事務所へ向つた。宮崎係官らは、同人が別の場所から入局するのではないかと思いそのあとを追つた。尾崎書記長は、これに気づき、連絡場所を被申立人側に知られるのをおそれ、延岡電報電話局の窓口に入つて身をかくしたが、そのうち同人が出て来たところを宮崎係官らにみつけられこのため申立組合の連絡場所を知られる結果となつた。

五(1) 昭和三六年八月一四日、申立組合は、熊本郵政局職員らの延岡郵便局以来の情勢に対処するため組合集会を開催した。集会は当初同局中庭の使用を予定したがそれが許可されなかつたため局庁舎に隣接した西側公道上で休憩時間中の約四五名の職員及び富永委員長、尾崎書記長らが参加して、同日午後〇時半ごろから一時ごろまで開催された。宮崎局長は、是枝課長らとともに集会の開催されている公道上におもむき、集会の状況をみ、その場所、時間、参加人員等を記録した。また坂本係長らは集会場所に近接した局庁舎の二階保険課事務室からまた、熊本郵政局施設課長二宮亮之介らは一階郵便課事務室から集会を傍聴した。なお、申立組合は、被申立人がその際集会の状況を写真撮影したと主張するが、その事実は明かでない。

尾崎書記長は、被申立人に対し、被申立人らが集会を傍聴していることについて抗議するとともに、その場所から退去するよう再三要求したが、被申立人はこれに応じなかつた。

(2) 同月一九日午後〇時半ごろ土田支部長らが先導して申立組合員約八〇名は延岡郵便局の中庭に集合し同局構内においてジグザグデモを行なつたのち通用門から局外に出て、午後一時ごろ延岡郵便局庁舎から約二〇〇メートル離れた延岡市南町にある光勝寺に向い同寺本堂内において職場集会を開催した。

被申立人は、同局保険課長代理福見公明に職員の行動及び勤務時間中の者の参加の有無を調べるよう指示した。福見課長代理は、坂本係長らとともに光勝寺におもむいたが、本堂の扉がしまつており、同局職員の姿が見えなかつたので中に入ることなく帰局した。

(3) 同月一四日、申立組合は、組合集会を延岡市本町にある郵政クラブにおいて午後三時半ごろから開催した。

申立組合は、この集会に関し、被申立人が非組合員である同局主事佐原忠外一名の職員を申立組合の組合員佐保正則の自宅に派遣して、集会の内容や討論過程や結論の調査を行なつたと主張するが、その事実は明かでない。

6(1) 昭和三六年八月一五日午前八時ごろ、尾崎書記長は、延岡郵便局内便所入口の組合掲示板など三ヵ所に、被申立人の許可を受けずに組合情報として「通用門の輩は郵政局トラック部隊、労働組合のピケ隊です」と書いたビラを掲示したところ、是枝課長は、尾崎書記長に対しこれを撤去するように申入れたが撤去しなかつたので自ら撤去した。

(2) 同月一七日、申立組合は、全逓宮崎県児湯支部高鍋分会などから組合員が寄せ書きして申立組合あて激励のため送付してきた赤い旗を延岡郵便局内の二ヵ所の組合掲示板に被申立人の許可を受けることなく掲示した。これに対し、是枝課長は、それを撤去するよう申立組合に対し申入れたが撤去しなかつたので、翌一八日午前八時ごろ自らこれを撤去した。

なお郵政省においては、就業規則によつて、庁舎その他国の施設にビラ等をちよう付するときは、事前にそれら施設を管理する者の許可を受けなければならないこととなつている。

7 富永委員長、尾崎書記長、全逓九州地方本部畑野、大石両執行委員らは、申立組合の組合活動の指導応援のため、昭和三六年八月一二日に被申立人が延岡郵便局職員以外の者の無断入局を禁止する旨掲示をした以後も、同局庁舎内にある組合事務所に入室し、更に同局の各課事務室にも出入りした。被申立人は富永委員長らに対し組合事務室まではよろしいが、同局の各課事務室からは退去するようにとの警告を同月一五日まで何度か行なつたが、富永委員長らは依然としてこの通告を無視して再三にわたり主に郵便事務室に入室し被申立人が退去を要求すると「バカタレ」、「どこの馬の骨か」など大声を発して抗議するなどした。このため勤務時間中の職員の中にもこれに同調する者も出て来て、業務に支障を及ぼすおそれも生じた。

そこで、被申立人は、同月一六日以降、通用門及び裏門附近に立つて入門者の監視に当り、同局職員以外の者が構内に無断で立ち入ることを防止した。このため申立組合の上部組織の役員である富永委員長らのほか、申立組合の役員であつても延岡郵便局以外に勤務しているもの、また、申立組合の役員で延岡郵便局の職員であるものであつても、当日勤務でないものは入局を拒否され、申立組合が組合事務所を利用することは著しく制限されるところとなつた。このため、申立組合は、局庁舎前の民家を賃借して臨時の組合事務所とせざるをえなくなつた。被申立人による上記入局防止の措置は、滞留郵便物排送の目途のついた同月二四日、被申立人が申立組合に通告してこれを解除した。

8 被申立人は、延岡郵便局内における業務の必要上、過員、欠員の調整等を行なうため、昭和三六年九月一日付けをもつて課相互間の八名の配置換と庶務会計課の係相互間の六名の担務変更を行なつた。この際、被申立人は事前に異動の計画が申立組合の組合員間に洩れることをおそれ、個別に希望を聞くことはしなかつた。

この配置換えの対象となつた職員の中には申立組合書記長黒木勝善ら支部役員三名及び申立人の主張する組合活動家三名が含まれ、また担務変更者中には土田支部長外一名の申立組合の役員が含まれていた。

9 昭和三六年九月五日午後三時五〇分ごろから約一時間局長室において、宮崎局長らと土田支部長及び約四〇名の申立組合組合員らとが雑談を行なつていた際、土田支部長から「局長はワンマンではないか」という趣旨の発言があつたことから、宮崎局長は、「土田さん、あんたもヒットラーみたいな独裁じやないか。」という意味のことを述べた。

第二当委員会の判断

一 団体交渉拒否について

昭和三六年八月一七日の強制労働排除についての交渉申入れについては、本田主事がこの交渉申入れを断る際土田支部長に対して述べた理由中には当をえないものがあつたとしても、この日の交渉申入れを被申立人が断つた理由は、当日、熊本郵政局の長井業務課長が排送業務について打合せなどするため来局していたこと、午後三時から団体交渉したい旨を申入れたのは午後一時半ごろであつたこと、さらに土田支部長は当日は外部の組合員が多教動員されているので本日の団体交渉はその中で行なうという趣旨の発言をしていたことにあつたと考えられ、したがつて被申立人が当日の交渉申入れを断つたのは不当な拒否であるとはいえない。

この交渉申入れ事項についてはその後一回も団体交渉がもたれていないが、申立人の主張するいわゆる強制労働の実態は少なくとも八月二三日ごろまで継続していたと認められ、申立組合がさらに交渉申入れを行なう機会は十分にあつたものと考えられるにもかかわらず、申立組合が再度交渉申入れをした事実は認められないので、その後において団体交渉がもたれなかつたことを被申立人のみの責に帰せしめるのも妥当でない。

八月二一日の能率向上手当の支給の基準についての交渉申入れについては、被申立人が団体交渉を拒否したものと認められない。

二 支配介入について

(1) 組合役員に対する尾行の点について

富永委員長に対する尾行の点については、坂本係長らは、同人が勤務時間中に郵便事務室に無断で入室し、大声を発するなどして職員の業務の執行を妨げるおそれが生じたので同人の退去を要求しながらこれに同行して時々メモをとつたものであり、これをもつて組合運営に対する支配介入とはいえない。

尾崎書記長に対する尾行の点についても、同書記長が無断で局庁舎内に入ろうとしていたので、宮崎係官らがそれを防止するため同人の行動を監視し尾行したものに過ぎず、そのさいたまたま申立組合が秘密にしていた連絡場所を被申立人に発見される結果となつたとしても、これをもつて被申立人の行為を不当労働行為として非難することはあたらない。

(2) 組合集会に対する介入の点について

昭和三六年八月一四日の申立組合の集会は、当初延岡郵便局中庭で開かれる予定であつたこと、集会の場所は局庁舎に隣接した西側公道上であつたこと、その時刻は大部分の職員が休憩時間中であつた午後〇時半ごろから一時ごろまでであつたことなどよりみて、被申立人らが公道上あるいは局庁舎内から集会の様子を眺めることが当然予想される状況であつたといわざるをえない。被申立人が、申立組合側の再三の抗議にもかかわらず退去しなかつたのはやや不穏当のそしりは免れないとしても、これをもつて組合運営に支配介入したというにはあたらないと考える。

八月一九日光勝寺において開催された集会については、被申立人の指示を受けて福見課長代理らが光勝寺におもむいたが、本堂の扉がしまつていたのでそのまま帰局したのであつて、集会に介入したとする申立組合の主張は失当である。

また、八月一五日佐原主事が申立組合の組合員佐保正則の自宅を訪れたという点については、その事実が明かでないので申立組合の主張は採用しがたい。

(3) 組合掲示物の撤去の点について

八月一五日のビラの撤去及び八月一八日の赤い旗の撤去については、それらの掲示物が無許可で貼られていたことがその理由とされているが、本来労働組合に掲示板を認めながらも、これに掲示する物について事前許可を要求することは妥当でないのみならず、掲示物の内容についても被申立人がそれを撤去したことが妥当であると考えられるようなものであつたとは認められないから、少くとも組合掲示板に掲示されたビラ等の撤去は、申立組合の広報活動に不当に介入したものといわざるをえない。なお、直接掲示物を撤去したのは是枝課長であるが、同人の職責に照らし、その不当労働行為の責任は被申立人が負うべきものと認める。

(4) 組合事務所の出入防止の点について

被申立人が八月一六日から二三日までの間組合及び組合員の組合事務所への出入を実力で防止したと組合の役員が禁止に反して事務室まで入つてきてそのために業務の正常な運営が困難になつたので延岡郵便局の職員以外の者の入局を禁止した結果それらの者は組合事務所へも出入できなくなつたのに過ぎないと主張する。しかし、申立組合の上部組合の役員が事務室に入るのを防止するためであれば、局庁舎の構造上全面的な入局禁止の措置をとるまでもなく、組合事務室の利用を妨げないでしかも局事務室に入ることを防止することも十分可能であつたし、被申立人がそのことを知らなかつたとも考えられない。しかも、被申立人の措置によつて、上部組合の役員のみならず、申立組合の役員であつても他局勤務のもの、さらに延岡郵便局勤務の組合員であつても当日勤務でないものまで入局を拒まれ、組合事務室を利用することができなくなつたことが認められる。この結果申立組合が組合事務室を利用することは相当期間にわたつて著しく制限されることとなつたものであるから、被申立人の行為は申立組合の運営に介入したものと判断せざるをえない。

(5) 組合員を強制的に配置転換したという点について

九月一日付の配置転換及び担務変更は、当時の延岡郵便局の定員の状況と業務の必要性とを考慮してなされたものであつて、申立組合に対する支配介入とは認められない。

(6) 組合役員を誹謗したという点について

九月五日の被申立人の発言は、申立人との言葉のやりとりの間になされたものにすぎず、この発言をもつて申立組合の運営に対する介入ということはできない。

当委員会は以上のとおり判断する。もつとも、二(4)の組合事務所の出入防止の点については、被申立人がこのような措置をとるに至つたのは、申立組合の上部組合の役員が被申立人の禁止に反して局庁舎内事務室に入り、大声を発するなどの行きすぎた行為をしたことが原因となつているものであるから、その措置の責任を被申立人のみに帰せしめることは、妥当ではないと考える。

よつて当委員会は、公共企業体等労働関係法第二五条の五第一項及び第二項並びに公共企業体等労働委員会規則第三四条を適用して、主文のとおり命令する。

昭和四〇年三月八日

公共企業体等労働委員会

会長 兼子一

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例